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難病ケア看護プロジェクトは、今を生きる療養者への支援と
それを社会に広く普及していくための発信を目指しています。



 そのために、難病の中でも最重度と言われる筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Screlosis, ALS)をモデルに、

1.   基礎・臨床成果に基づく看護ケア技術開発

2.   安全な療養環境・支援システムの構築

3.   地域ケアシステムの構築

の3つを柱に展開してまいります。

 これらの研究活動を循環させることで、研究活動の充実と同時に、今を生きる療養者支援の向上が期待できるといえます。またそれには、難病者自身の期待や要望(ニーズの発掘)と評価(Patient Reported Outcome)といった当事者参加が欠かせないものといえ、この視点を大切に取り組んで参ります。

 難病は、誰もが罹患する可能性のある疾病です。都医学研の神経変性疾患の発症メカニズムを研究する成果が生かされ、原因が究明され治療法につながる未来はきっとやってくると信じています。それまでの間、難病患者の生活が「難」に至らない社会、すなわち、社会全体で支える仕組みに貢献してまいります。



1.   基礎・臨床成果に基づく看護ケア技術開発

 1つめの看護ケア技術開発では、代表的なものとして、意思伝達維持に向けた集学的な研究があります。

意思伝達維持に向けた集学的取組み

意思伝達維持に向けた集学的取組み意思伝達維持に向けた

 国内随一の神経難病の医療拠点である都立神経病院との共同のもと、看護・臨床神経・病理のチームで推進しています。

 かつては、眼の動きは悪くならないと言われていたALSですが、眼が動かなくなってしまう方もいます。全身不随で、眼の動きすら途絶えてしまう場合には、YesかNoを伝えることまでもできなくなります。これに対し、世界各地で脳波や脳血流など微細な生体信号を用いた意思伝達装置の開発が急ピッチで行われています。これらの最先端技術の開発は夢や希望を与えてくれますが、機械があればいいというものではありません。それを使う人、支援の力があってのことといえます。特に、ALS患者さんは、眼が動かなくなる事に先行して、乾燥や眩しさを感じることがあります。

 そういった症状を捉え、適切なケアをすることによって、良い状態で最先端技術を試用することが可能になるように、ケア技術としてまとめ、支援体制を作り上げていくことを目標にしています。



2.   安全な療養環境・支援システムの構築

 2つめの安全な療養環境・支援システムの構築では、医療・福祉・介護の複合的なニーズを併せ持つ難病患者の生活の質を向上するために、病期に応じた医療提供体制・看護機能の確立を目指した外来看護機能の充実やテレナーシングシステム*の開発、看護と介護といった多職種連携を効果的に進めるための連携指標の開発、や在宅医療安全に関する研究として、「在宅医療安全/ヒヤリハット情報収集・情報検索システム」があります。これは、在宅人工呼吸療法中に生じたヒヤリハット事象について、事象を蓄積することで、より効果的にリスクマネジメントを可能とすること、さらに類似事象から原因や対策を検討する際の一助とするための双方向の情報ネットワークの構築を目指しています。



病期に応じた医療提供体制・看護機能の確立


看護と介護の連携の質指標の開発

在宅医療安全に関する研究



3.   地域ケアシステムの構築

 難病者を地域全体で支えるために欠かせない難病保健活動の充実に向けた取り組みです。個別ケアのマネジメントは、介護保険サービスに基づきケアマネージャーによって行われることが増えてきました。しかし、個別ケアでは解決できない問題を地域全体の課題としてとらえ、地域にある資源を活用し、対応を導き出す難病保健活動は、地域包括ケアの時代と言われる現在の保健活動のモデルの一つとなりうるといえます。特に、難病医療法施行元年である2015年から、新たな支援体制の構築が求められています。

難病の保健活動(難病対策地域協議会)



1 ~ 3 の研究活動を柱に
「難病ケアレジストリ」の構築を目指す